舞台裏のCocoon 2025年7月、東京都板橋区に 小さなバレエスタジオ「Studio Cocoon」をオープンしました。 日々の出来事、季節の移ろい、訪れる人たちとの出会い。 スタジオが少しずつ形を成していく過程を、 “舞台裏”からそっと綴っていきます。

  • 積み重ねのための場所
    on 2025年12月3日 at 11:08 AM

    努力は、必ずしも結果に結びつくとは限らない。それは、多くの人が一度は感じたことのある現実だと思います。それでも、正しい方向に努力を積み重ねることは、結果に近づくための、唯一の道でもあります。そして何より、目標に向かって努力し続けられること自体が、すでにひとつの「選ばれた才能」だと、私は感じています。Studio Cocoonのレンタルスタジオを、定期的に、しかもかなりの頻度でご利用くださっているバレエの方がいらっしゃいます。お邪魔にならないよう、直接お話しすることは控えていますが、スタジオに残る空気や、床の使われ方から、どれほど真剣に身体と向き合っているかが伝わってきます。その練習量を知るたび、こちらの背筋まで自然と伸びるような気持ちになります。バレエの世界で成功できるかどうか。それは簡単に言い切れるものではありません。けれど、これだけの時間と集中力を、目標のために積み重ねられる人は、バレエであっても、バレエ以外であっても、きっと豊かな人生を歩んでいかれるのだと思います。結果より先にあるのは、自分を律し、向き合い、続けるという姿勢。それは年齢やジャンルを超えて、生き方そのものに表れます。Studio Cocoonは、努力が安心して積み重ねられる場所でありたいと考えています。続きをみる

  • 最高な一日
    on 2025年11月10日 at 9:39 AM

    「今日は最高な一日だったなー」最近、4歳の息子がよく一日の終わりにこう言います。「今日は最高な一日だったなー」とか、「今日は最高じゃなかったなー」と。その言葉を聞くたびに、思わず笑ってしまいます。一日の出来事を自分なりに振り返って、“いい日”だったのか、“そうじゃなかったのか”を素直に口にしているんです。息子にとって「最高な一日」とは、遊園地に行ったり、ママとパパがずっと一緒にいる日。そして「最高じゃない日」というのは、ママやパパとたくさん喧嘩をしてしまった日です。そんな彼は今、バレエを続けています。ただ、見ていると――本当に好きなのか、そうでもないのか、まだよくわかりません。レッスン前は気が進まなそうでも、終わったあとは少し誇らしげな顔をしていることもあります。きっと、まだ“好き”と“がんばった”の区別が曖昧なんだと思います。でも、いつかバレエを頑張った日を、「今日は最高な一日だったなー」と言ってくれるようになったら、それはきっと、努力の中に楽しさを見つけた証拠。そして、親としては何より嬉しい瞬間だと思います。今日もまた、「最高だったなー」と言って眠りにつく息子の寝顔を見ながら、そんな日が少しずつ増えていくといいなと思っています。続きをみる

  • 5分の舞台に込めた想い
    on 2025年11月3日 at 10:58 PM

    11月3日、Dance Labo Cocoonは「命のつどい」チャリティー公演に出演しました。会場は、目黒区にあるめぐろパーシモンホール。舞台に立った生徒たちは、緊張と期待の入り混じる中で、これまでの練習の成果をしっかりと発揮してくれました。Dance Labo Cocoonでは、これまでにも靖国神社、大山文化会館、アクトホールなど、数々の大きな舞台に立たせていただいてきました。こうした経験の積み重ねは、子どもたちにとってかけがえのない財産です。大人になってからも、その時に感じた光景や拍手の音は、ただの思い出ではなく、「自分を信じる力」へと変わっていきます。本番前のリハーサルでは、子どもたちがパーシモンホールという大舞台に立つ姿を見て、思わず涙ぐむ保護者の方々の姿もありました。ライトに照らされたステージに立つ小さな背中を見つめながら、これまでの日々の努力や成長が一気に蘇ったのでしょう。その瞬間、客席側にも静かな感動が広がっていました。続きをみる

  • コンクールクラス
    on 2025年10月30日 at 11:00 AM

    モダンバレエのコンクールは、自由な表現力と創造性が重視される舞台です。音楽や動き、間の取り方、感情の表現――どれも「正解」が一つではありません。自分の内面と向き合いながら、“踊りで語る力”を磨いていくのが、モダンバレエのコンクールです。コンクールに出ることは、単に「賞を取ること」が目的ではなく、一人ひとりが自分の限界を少しずつ超えていく過程でもあります。その努力の積み重ねが、舞台の上で確かな輝きとなって現れます。続きをみる

  • 繋ぐこと
    on 2025年10月29日 at 11:13 AM

    子どもと話していたとき、ふいに聞かれました。「パパとママは、いつかいなくなるの?」子どもを持つ親なら、一度は向き合う言葉かもしれません。正直に答えるべきか迷いましたが、「いつかはいなくなるよ。でもその頃には、あなたにも大切な家族ができてるから大丈夫だよ。」と答えました。すると子どもは目を潤ませながら、「神様がいなくなれば、そんな決まりなくなるよね?パパとママがいなくなるの、やだ。」“死”という概念をまだ知らない年齢だからこそ、その言葉にはまっすぐな愛と、不安が混ざっていました。本当は、家族とはずっと一緒にいたいものです。それは大人になっても変わりません。けれど私たちは、いつかこの世界を去ります。だからこそ何かを継いでいくこと。それが人生の目的のひとつなのだと思います。交わした言葉。手の温もり。楽しい記憶、悲しい記憶。そして、生きる姿勢。それらは目には見えない“バトン”のように、次の世代へ静かに渡されていく。人は、いなくなる瞬間よりも残していくものがあるかどうかで永く生き続けるのだと思います。ダンスも、ひとつの動きには、教えてくれた誰かの想いが宿り、音楽に合わせて、また次の誰かの心へと渡されていきます。たとえ舞台が終わっても、その光や鼓動は、観た人、踊った人の中に生き続ける。スタジオを続けるということは、「継承」の営みの真ん中に立つこと。踊りの火さえ絶やさなければ、未来の誰かがきっとまた、その火を灯してくれます。いつかまた、「パパとママ、いなくならないで」と言われたら、「大丈夫。姿が見えなくなっても、パパとママはずっと、あなたの中で生きてるよ」そう胸を張って伝えられる親でありたい。その未来を、一緒につくっていこうと思います。続きをみる