
舞台裏のCocoon 2025年7月、東京都板橋区に 小さなバレエスタジオ「Studio Cocoon」をオープンしました。 日々の出来事や、暮らしの中で出会った 映画、音楽、本から受け取った感覚や余韻を、 モダンバレエと重ね合わせながら言葉にしていきます。
- コントロールon 2026年2月5日 at 11:05 AM
少し前に書いたブログに、あるコメントをいただいたことがきっかけで、「コントロール」という言葉について考えました。結果と準備。自分で動かせるものと、どうしても動かせないもの。日々の中で、その境目に立たされる場面は、思っている以上に多い気がします。結果は、ほとんどコントロールできません。舞台に立てば、本番の空気、照明、客席の雰囲気や身体の状態。どれも、完全に思い通りにはならない。文章を公開しても、どれだけ読まれるか、どう受け取られるかは分からない。仕事も同じです。どれだけ準備した企画でも、相手の判断や事情で進まないことがある。タイミングひとつで、結果が変わってしまうこともある。評価や成果は、いつも自分の手の中にあるわけではありません。でも、準備は違っていてレッスン前に、身体をほぐしておくこと。振付を何度も確認すること。無理をしないと決めること。文章を書く前に、一度書き出してみること。言葉を削ること。今日は出さないと判断すること。仕事であれば、資料を整える。数字を確認する。事前に起こり得ることを想定しておく。それらはすべて、自分でコントロールできることです。準備の時間は、ほとんど誰にも見えません。成果がすぐに表れるわけでもなく、「これで意味があるのだろうか」と思う日もあります。それでも、準備をしていると、結果に振り回されにくくなります。うまくいかなかったときでも、立ち止まり方や、次にやるべきことが見えてくる。準備は、結果を保証するものではないけれど、自分を崩しきらせないための支えにはなります。コントロールできないことがある、という前提で生きる。その上で、コントロールできる部分を丁寧に整えていく。舞台でも、仕事でも、日常でも。派手さはないけれど、その積み重ねが、自分を前に進ませてくれると感じています。続きをみる
- どうせ最後は上手くいく!on 2026年1月29日 at 12:18 PM
最近読んだ『生きのびるための事務』は、坂口恭平氏が、自身の経験をもとに創造を続けながら現実を生き抜くための「事務」について語った一冊です。ここでいう事務とは、雑務や裏方作業ではなく、思考や衝動を現実につなぐための、静かで実践的な行為。華やかではなく、評価もされにくい。スケジュールを整え、数字を確認し、やるべきことを一つずつ処理していく。淡々とした作業です。けれど、これがなければ、多くのことは途中で立ち行かなくなってしまう。衝動だけでは生活は不安定になるし、すべてを枠に合わせて生きるのも息苦しい。その間をつなぐものが「事務」なのだと思います。事務は、創造の対極ではなく、それを支える土台。思いつきを放置せず、現実に着地させるための準備です。考えるだけでは何も残らない。形にするには、とりあえず手を動かすことが必要になる。うまくいかない時期も、不安になる日もあるけれど、事務を続けていると、感情に飲み込まれず、次にやるべきことが見えてきます。だから私は、生きのびるために、今日も事務をします。「どうせ、最後はうまくいく」この言葉を、派手な希望ではなく、静かな作業の支えとして。続きをみる
- 一瞬も一生も美しくon 2026年1月26日 at 12:14 PM
某化粧品会社の「一瞬も一生も美しく」という言葉があります。これはコーポレートメッセージ(企業理念)で、「瞬間的な美しさ」と「年齢を重ねた先にある永続的な美しさ」の両方を大切にする考え方です。決して、「アンチエイジング」ではなく、その年齢ならではの美しさを肯定しています。続きをみる
- 大人バレエ、はじめの一歩が舞台につながるまでon 2026年1月21日 at 10:40 AM
Dance Labo Cocoon は、第55回ふれあいステージ(板橋区立文化会館・大山文化会館)に参加させていただくことになりました。大山文化会館のステージは、地域の多くの団体が集う大舞台。広い舞台空間と、本格的な照明・音響の中で踊ることができる、とても特別な経験の場です。Dance Labo Cocoonからは、ベビーから大人まで、総勢約20名が出演し、約10分間の作品を披露します。年齢も経験もさまざまなメンバーが、この大舞台に一緒に立つこと。それだけでも、ひとつの大きな挑戦です。練習を重ねる中で、去年から新しく入っていただいた大人バレエの生徒様から、こんな声が聞こえてきました。「自分たちの踊りを、観客の方だけでなく、ほかの生徒さんにも見てもらえるのがうれしい」上手に踊ることや評価されること以上に、「踊ることが好き」「誰かに見てもらえることがうれしい」そんな純粋な気持ちが、今回の作品の土台になっています。大舞台に立つ緊張の中でも、踊るよろこびや、その人らしさが、きっと自然と伝わる時間になると思います。地域に開かれた公演ですので、モダンバレエやダンスを観たことがない方にも、気軽に楽しんでいただけるステージです。お時間が合いましたら、ぜひ会場で、生徒たちの舞台を見守っていただけたらうれしいです。皆さまのご来場を、心よりお待ちしております。第55回ふれあいステージ|板橋区立文化会館出演予定は、3月15日(日)15:40〜15:50 大人文化会館→https://www.itabashi-ci.org/culturehall/access/続きをみる
- 盾とバレエon 2026年1月19日 at 11:09 AM
先日、ふと盾(シールド)のことを思い出し、読み返しました。この本を最初に読んだのは、今から20年近く前のことです。物語は、幼い頃から共に育った二人の少年が、「人の心には、とてもやわらかい大切な中心があり、それを守るために人は盾(シールド)を持つ」という教えを受けるところから始まります。成長とともに、二人は異なる生き方を選びます。一人は、成功や肩書、評価を盾にして生きていく。もう一人は、目に見える成功から距離を取りながら、自分の感覚を大切に、静かに生きていく。当時の私は、「盾=強さ」「守る=負けないこと」そんなふうに、どこか単純に受け取っていた気がします。けれど、時を経て読み返すと、この本が語る「盾」は、もっと繊細で、やさしいものに感じられます。例えば、バレエの世界。身体も、感覚も、心も、とても繊細で、ほんの少しのことで簡単に揺らいでしまいます。だからこそ、人は無意識のうちに盾を身につけます。テクニック。経験年数。「できる自分」であろうとする意識。それらは、舞台に立つため、続けていくために、確かに必要な盾でもあります。けれど、その盾が厚くなりすぎると、音楽や呼吸、身体の奥にある感覚から、少しずつ距離が生まれてしまうこともあります。強く固めることではなく、やわらかさを失わないまま立つこと。本当に守りたいのは、評価や結果よりも、その感覚なのかもしれません。20年近く前に出会った一冊が、今になって、静かに腑に落ちてきます。年齢や立場が変わっても、この物語が投げかける問いは、バレエに関わる多くの人の心にも、そっと触れるように思います。続きをみる
