揃うこと、響きあうこと
休日は、自転車で街を走るのが好きです。
風を感じながら知らない道を曲がると、思いがけない風景に出会える。
そんな瞬間に、心がワクワクします。
最近、意識するようになったことがあります。
それは、隣同士の家の雰囲気がどこか似ているということ。
車の色も、庭に植えられた植物も、なんとなく似ている。
きっと同じ地域で暮らしているうちに、自然と選ぶものが似てくるのでしょう。
気候や環境の影響だけでなく、
“みんなと同じ”であることに安心する気持ちが、
私たちの中には確かにあるのだと思います。
モダンバレエも、ある意味でこの「同調」と深く関わっています。
群舞では呼吸を合わせ、動きを揃え、音楽の流れに身を委ねる。
けれど、それは単に「同じ動きをすること」が目的ではありません。
本当に美しい群舞は、
一人ひとりが“自分の心で”同じ方向を向いたときに生まれます。
そこには、形だけではない「内側の共鳴」があります。
日常でも踊りの中でも、“みんなと違う”ことが
少し怖く感じる瞬間があります。
でも、モダンバレエの面白さは、
むしろその“違い”が作品を豊かにするところにあります。
同じ振付をしていても、
体のライン、呼吸、間の取り方はひとりひとり違う。
その差があるからこそ、作品に奥行きが生まれるのです。
暮らしの中でも踊りの中でも、
「周りと調和しながら、自分らしくある」こと。
それは簡単なようで、とても繊細なバランスです。
人はひとりでは生きられない。
けれど、誰かとまったく同じでも生きられない。
その間で揺れながら、
私たちは少しずつ自分の形を見つけていくのかもしれません。
レッスンの中で、子どもたちが“自分の表現”を見つけていく瞬間があります。
最初は周りを真似していた子が、
ある日、音に合わせて自然に体を動かしたとき——
その“ひとつの違い”が、とても美しく見えるのです。
「同調」から始まり、「共鳴」へ。
バレエも、暮らしも、そんなふうに広がっていけたらいいなと思います。

